百景図よもやまばなし

第97図 小正月の楽しみ

投稿日:2016年12月21日

元旦が大正月なら十五日は小正月である。

松の内まで忙しく働いた女性をねぎらう、という意味では女正月とも言うそうだ。

我々が子供の時には、この日正月飾りを集めてどんどん(どんと)焼きをしたものである。

年が明けて初めての満月の日(旧暦)は記念すべき日なのだ。

この絵は墨塗りということであるが、年頃の男女が本当に楽しそうに遊び興じている。

この時代、男女が人目を気にせず遊べたのはそんなになかったのではなかろうか?

小正月の行事として、この日ばかりは遠慮なく触れ合うことができた、そんな日だったに違いない。

昔の人の知恵である。

羽子板も小僧のやっている、橙を手拭いにしのばせた「尻祝い」も、たわいのない遊びのようであるが、

調べてみると実は深い意味が込められている。

羽子板の羽の球は、ムクロジという木の実を使っている。なぜムクロジかというと、

ムクロジは漢字で書くと「無患子」あるいは「無苦労児」となる。

「子が患うこと・苦労が無いように」そんな思いを込めた遊びなのだ。

女性が、この遊びの主体になるのが分かるような気がする。

尻祝いはというと、特に村に来た若い嫁さんなどに「尻祝い」と打つことは、

「子づくりがんばれ」そんな意味を込めているのだ。

日本語で「尻を叩く」とは、やる気を出すように励ますとか、早くするように催促する

という意味がある。橙(だいだい)は、代々家が続くようにという縁起物。橙と尻叩き成程。

まぁ冷やかしながら、間接的スキンシップを楽しんでいた、というのが本音かもしれませんね。

ここには描かれていないが、武士にとってはこの日はとても重要な日。

元服の儀式の日だ。15歳になると月代(さかやき)を剃って、ちょん髷を結うのがこの日。

その時から一人前の侍の仲間入りだ。その名残が日本の「成人の日」だった。

ということで15歳の最初の十五夜の日は意味のある日だったが、新暦になると

月の満ち欠けも合わなくなり、いつの間にか「成人の日」は15日ではなくなってしまった。

  

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