百景図よもやまばなし

第88図 徳丈茶屋の蓬莱糖

投稿日:2016年11月24日

お休み処の縁台に座っているおじさん、よく見ると嬉しそうに口元をほころばせて、何かを食べている。

これは何だ?

実はこれがこの峠の名物、蓬莱糖だというのである。蓬莱糖とは蕨餅(わらびもち)のことである。

百姓さんたちはコメ作りが終わった後、蕨の根を掘りそれを叩いてデンプンを取り出していたのだ。

冷たい水で何度も洗い流して、きれいなデンプンを取り出すのはつらい作業である。

蕨粉は日本では石見・美濃・土佐の三国が有名で、特に石見の蕨粉は上質だったと文献にある。

この峠ではその蕨粉を使い、外郎に似た蕨餅「蓬莱糖」を作って旅人に出していたのだ。

今では国産の蕨粉はなかなか手に入りにくく、このおじさんは非常に贅沢な時間を過ごしているのである。

余談だがこの峠にここの往還の説明看板が立っており、その中に馬子唄が紹介されていた。

丁度この絵に馬子が描かれているが、その馬子も唄っていたかもしれない。

「馬が物ゆうた 徳城の峠で おさん女郎なら 乗しょうとゆうた」と。

またこの峠を越えて伊能忠敬測量の一行が歩いたことも別の看板に記してあった。

なおこの徳城往還は国指定の史跡となっている。ハイキングには最高である。

  

  

左は峠の茶店があった場所

白い杭の右の山に登ると海が見える

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