投稿日:2016年09月28日
野坂峠は山陰道石見の終点である。
この絵の近くに、今は道の駅「願成就温泉」が建っている。
山陰道とはいわば今の国道九号線のようなものである。
山陰道は小郡が終点だったが、九号線は下関だ。
野坂峠を越えるとここから先は長門の国になる。
今は山口県と島根県の県境だ。
長門側では山陰道と言わず、石州街道というのが一般的だったようだ。
この絵は百景図の中でもなかなか秀作であると思う。テレビなどでたとえれば
動画を一時停止したような図で、再生ボタンを押せば今にも動き出しそうである。
馬の蹄の音、いななき。馬方の腕に力がこもり、「アオよ、こっちに寄れ」などと言う声も聞こえそうだ。
近くの馬を見てアオが興奮したのかもしれない。当時は牡馬同士が出会うと、
とんでもないことがよく起こったそうだ。去勢技術がなかったせいだ。
武士も驚いて振り返っている。虚無僧は尺八一本を帯に差し、颯爽と歩いている。
巧みな遠近法で、街路の松並木の美しさと、細くなる道がこれから続く、
果てしない旅を予想させる。峠の向こうからやってくる旅人の頭も心にくい演出だ。
向こうに2本立っている道標の石、この一本は、実は津和野の郷土館の前庭に立っている。
是より北津和野領とある。(從是北津和野領)この石柱も是非見てほしい文化財だ。
この山陰道の道は今でも山の中に残っている。少年鴎外もここを通って東京へ旅立った。
津和野に来られたら是非歩いてほしい道の一つだ。
財間酒場の道をまっすぐ1㎞先、
野坂峠に続く石畳の道が出現する。
途中切れるが又山中に出現する。歩くのは秋から冬がおすすめだ。