投稿日:2016年09月15日
高揚提灯を灯して急ぐ一行は幾久の猟場へ向かう玆監公と御供の皆さんである。
時刻は朝方の4時ごろ。
秋深まる頃、冷え冷えした夜明けを静かに急いでいる。
場所は西周家を少し過ぎたところ。切り株の土手の向こうは錦川。
そのまた向こうに青野が見える。
駕籠の中の殿様は、今日の猟に心ときめかしていたに違いない。
略供とあるように今日は皆軽装である。駕籠もいつもの乗り物とは違い簡素である。
供侍も肩衣でなく羽織である。ぶっさき羽織といって刀の鞘がきれいに出るので幕末に流行した。
徒士組は股引を穿いている。手提げの提灯を持つのはその頭だろうか。
どこか厳しい顔をして睨みをきかせている。
高揚提灯を持つのは手回り組かと思われるが、足半(あしなか)を履いているようだ。
草履の後ろ半分がない。踵は土に着くわけであるが、非常に機能的だったようだ。
戦いのない時代には、もっぱら身分の違いで履き分けていたということだ。
この図の後ろに坊主頭が見える。若しかしたらお数寄屋番の格斎さんかもしれない。
猟場にあった「含碧亭」で殿様にお茶を淹れるのであろう。
それにしてもこの図は明る過ぎて、夜明け前というのを忘れてしまう。