百景図よもやまばなし

第18図 殿は何処に

投稿日:2016年07月08日

「この絵の中には殿様がいます。」というと皆訝しがる。

殿の姿はどこにも見当たらないからだ。

だがよく見ると二階建ての櫓。

屋根の下の幕が、左隅だけ釣り上げられている。

実はここに殿がいるのだ。

この櫓は御物見櫓なのだ。

二階には12畳と10畳の部屋が二間ある。

12畳の部屋に殿は居て、高みの見物をしていたのだ。

この歌舞伎は、魚町演じる菅原伝授手習鑑の「車曳き」の名場面。

三っ子で生まれた「梅王丸」「松王丸」「桜丸」が、

時平組道真組に分かれ数奇な運命をたどるストーリー。

迫真の演技に、殿様も身を乗り出さんばかりに観ていたのだろう。

この櫓は津和野高校の向かい、嘉楽園に現存している。

見落としがちだが、当時を偲ぶ一級ポイントとして価値は大きい。

  

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