投稿日:2016年07月08日
「この絵の中には殿様がいます。」というと皆訝しがる。
殿の姿はどこにも見当たらないからだ。
だがよく見ると二階建ての櫓。
屋根の下の幕が、左隅だけ釣り上げられている。
実はここに殿がいるのだ。
この櫓は御物見櫓なのだ。
二階には12畳と10畳の部屋が二間ある。
12畳の部屋に殿は居て、高みの見物をしていたのだ。
この歌舞伎は、魚町演じる菅原伝授手習鑑の「車曳き」の名場面。
三っ子で生まれた「梅王丸」「松王丸」「桜丸」が、
時平組道真組に分かれ数奇な運命をたどるストーリー。
迫真の演技に、殿様も身を乗り出さんばかりに観ていたのだろう。
この櫓は津和野高校の向かい、嘉楽園に現存している。
見落としがちだが、当時を偲ぶ一級ポイントとして価値は大きい。