百景図よもやまばなし

第12図 表門から出る奥方

投稿日:2016年06月24日

12図から、百景図はいよいよ城を出て城下の景色へと変わる。

館を出る時は、この立派な二階建ての櫓門を

潜って出るのである。赤瓦の本瓦葺きである。

屋根に鎮座する二匹の鯱は何とも大きく厳めしいが、

漆喰で目を入れているところは面白い。

瓦と同じ焼き物だろうが、鱗や背中のとげを一枚一枚重ねて張り付けているように見える。

また、棟瓦も漆喰をいれて波の模様を際立たせている。

輪違いでなく、輪を重ねた模様にしている。しかも、大棟だけでなく丁寧に、

降り棟も隅棟にもこの模様を続けている。なかなか手がこんでいる。

鯱にしても波模様にしても火よけのまじないである。

この屋敷は1853年に焼けたばかりなので、ことに念入りに作ったのかもしれない。

ちなみにここの二階は武器倉庫になっていた。まさに櫓(矢倉)である。

門の前の錦川は、今より水量が豊富で綺麗である。格斎さんの筆にも力が入っている。

手前に美しいカーブを描く松は、現在ある松によく似ている。

奥方は何を思いながら御輿に揺られていたのだろうか。

  

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