投稿日:2016年06月03日
百景図に登場する最初の女性は奥方である。
玆監公の奥さんの貢子君が、腰元を引き連れにぎやかに松茸狩りをしているワンシーンである。
一人一人の表情が楽しさに満ち溢れている。絵の色彩もこれほど明るく豊かなものは見当たらない。
「なんと立派な!」「ほほほ‥」「太いですこと」そんな声が松の間から聞こえてきそうである。
遠くの緋の毛氈の上に座っておられるのが貢子君。
実はちょっと前、貢子君は江戸で幼子を二人なくしている。
津和野へやって来て、松茸狩りに嬉々と興じる腰元たちの姿に、
ほんの少しは慰められたかもしれない。
このあと10年後の明治6年、貢子君は若くしてこの世を去っている。
この絵は、津和野へ来て一番心安まったひと時だったかもしれない。
この絵を描いた格斎さんの思いが伝わってくる。
それにしても当時の山の手入れは驚嘆すべきである。
今城山の藪の中に、こんな和服姿で歩くことは不可能である。