センター日記

津和野郷土料理:うずめ飯

投稿日:2018年08月31日

津和野の料理 ー 継ぐ、育む、伝える、創る

  

この町を歩いていると、「うずめ飯」と謳っている看板にしょっちゅう出会うはずです。喫茶店の軽食メニューのなかにもあったりしますけえ。津和野の郷土料理なんですよ。
年がら年中、いつでも食べられるもののように思われているんじゃけど、厳密に言えば、時季がある。ちょうど「春は名のみの風の寒さや」と実感するころとでもいいますか。せりの刻んだのをたっぷりと入れますけえ。その旬が早春というわけです。ちょっと癖のある香りが、なんともいえんですがなぁ。

香りといえば、もうひとつ、すりおろした根わさびも添えます。そうせんと本式になりませんし、おいしゅうない。練りわさびと違って、ほのかな甘みがあるんです。
せりにしろ、根わさびにしろ、澄んだきれいな水があるところでしか育たんものでしょ。広葉樹の落葉が朽ちて層をなすなか、くぐり抜けて、一滴一滴濾過されたような水がないと

津和野には、栽培できる環境がある、青野山の麓のほうにね。郷土料理とは、土地の自然や風土までも映すものなんじゃなと、つくづく思いますよ。
しかし、いつごろだれが作り始めたのか。由来ははて。なんの文献も残っておらんもんで、わかりません。ただ、具が人参、干し椎茸、豆腐、かまぼこ、せり、海苔、根わさびでしょう。
保存食と家のまわりにあるものとの組み合わせじゃから、不意の来客にでもちゃちゃっと間に合わせで作ったのが最初ではなかろうかと思うとるんですがなあ。

 

名は、ご飯に具を埋めるところからつけられたんでしょう。埋めてあるから見た目は、汁のなかにご飯がよそってあるだけ。知らん人はびっくりしますよ。下からなにが出てくるかお楽しみ?
いやいや、そんな茶目っ家のある趣向じゃない。
具がありあわせのようなものですから、むしろ、ご飯の上にのせちゃあみすぼらしい、ということで、埋めたんじゃないかと思いますよ。粗末なものですがどうぞ、という気持ちの表れですね。
あるいは、見ためはともあれ、おいしいものはおいしい。実利をとる気風の表れとも解釈できる。

根わさびも、もちろんご飯の下。なかには、お茶漬けのようにかきこんで、目を白黒させる人もおりますけえな。「なんで隠しとったんか」いうて怒られたこともあります。そりゃ、つんつんと辛味が鼻の掃除をするようじゃから。腹のひとつも立とうというもの。
血気盛んだったころ、酔っぱらってからむお客さんや憎らしいお客さんには、うるさいけえ、ちぃと多めに入れてやったもんです。効果てきめん。すぐおとなしゅうなりよりました。

このごろは、わかりやすく、見栄えよく、海苔と根わさびだけはご飯の上にのせるようにしています。邪道?ほんとは、下に埋めた方が伝統的といえるんじゃろうけど。ま、根わさびはいまじゃ高級な食材。隠さず、堂々と表にだしたほうが、もてなす心が伝わるようにもおもいまして。

 

津和野今昔 百景図を写す

 

津和野の郷土料理といえば「うずめ飯」と、まず紹介されます。

 

ご飯の下に、山菜や豆腐などの具材を”埋め”、だし汁をかけて頂く。サラサラと、何杯でも食べられる料理。

 

このうずめ飯は、わさびを気兼ねなく食べて頂くもてなし料理という説、庶民が具材を隠してこっそり贅沢するための料理という説がありますが、定説はありません。

今日では、山菜やワサビを具にする津和野のうずめ飯が代表となっていますが、かつては肉や魚などの具のバリエーションも豊富で、広く石見地方で食べられていたと言われています。

 

このうずめ飯が津和野の郷土料理として全国に響くきっかけは昭和14年(1939)に宮内庁が行った全国の郷土料理調査です。この調査で「日本五大銘飯」の一つに津和野のうずめ飯も選ばれましたのです。現在では年中食べられますが、やはりワサビが美味しい春先に食べたいものです。

  

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