投稿日:2017年01月07日
「思わずシャッターを切りたくなる」
そんな津和野の知られざる場所を
津和野百景図を手掛かりに探す、
【秘境を撮る】シリーズ第6弾。
前回の中座(なかざ)前編の続きを歩いていきます。
財間酒場まで戻って、今度はポストのある方角へ石垣に沿って歩きます。
津和野城下町絵図で示す、
①から③へ向かう道です。
道の縁には、水路が流れ、民家へと石橋が掛けられています。
緩やかな坂道を歩いたので、気づけば津和野城下より、小高い場所にいます。
遠くの山々や川を眺めながら、さらに奥へと進みます。
津和野百景図の中に、こんな雰囲気の景色が描かれています。
第六十一図「桂川の川柳」
米をつく水車を携えた家々。
石垣で組まれた川。
水田の遠くに山の景。
実際の桂川はもう一本先の川ですが、このあたりは今も昔も変わらない穏やかな景色があります。
なつかしい雰囲気の残る踏切。
踏切を越えると、またもや巨大な石垣が姿を現します。
背の2倍ほどある高さ。
苔が生えて歴史が感じられます。
この石垣も実は、津和野百景図に描かれたもの。
第六十二図「中座庚申堂(なかざこうしんどう)」
左側に描かれた土蔵の石垣が、先ほど見た石垣のようです。
馬を連れた人が歩くこの道は、長門国(山口県)へ通じる主要な道でした。
中心に描かれたジグザグの道が庚申山へと続きます。
(先ほどの古地図③のところ。)
その道は現在、お墓へと続く道となっています。
絵のように、ジグザグと登ると、墓地があり、見晴らしの良い頂上に着きました。
正面には津和野の城下町。
山の上にある、津和野城の石垣まではっきり見渡せます。
うしろ側には、美しく手入れされた棚田。
ここからの景色こそ、自然と歴史が調和する、津和野らしい景色と言えるかもしれません。
庚申山を降りて、さらに長門国の方へと坂を登ります。
秋には一面が黄金色になるであろう、棚田の真ん中を道は続きます。
小さな集落を横切ります。
時折、立派な石垣や歴史を感じる土蔵に出逢い、歩けばシャッターを切る時間が続きます。
集落を過ぎて、川の手前、左手に鳥居と大きな灯篭が現れます。
見上げて驚きました。
石垣の上に、巨大な木が立っていました。
津和野町指定天然記念物「タブノキ」
根は蛇のように張りめぐり、枝は生命力を溢れさせながら、四方八方を手さぐりするように、前へ上へと伸びています。
樹齢はわかっていませんが、どこか神々しく、神秘的な力のある樹です。
さらに神社の道すじに進むと、
林の縁には、崩れた石垣に根が這うように立っている木が。
まるでアンコールワット遺跡のよう。
この先は石垣の立派な棚田が続きます。
城跡のような風格の畑。
おそらく江戸時代から使われている石垣もあるそうです。
国道9号線に上がる道が見えてきたところで、引き返すことにしました。
この先には、「野坂」と呼ばれる古道もあります。
第六十図「野坂」
長門国(山口県)との国境付近。
旅人が往来した道でした。
帰り道は庚申山を通らずに、もうひとつの道を通りました。
小高いその道から、城下町の中を走る、汽車の姿を横目で見ながら。
お殿様の行列が江戸へと歩いた道。
長門国からの旅人が往来した道。
現代の汽車が走る線路。
時代を越えて、さまざまな道が交差する中座。
そしてその道を彩る、石垣、棚田、酒蔵、眺望、人々の暮らし。
写真にはおさめられない息づかいをぜひ歩いて体感してみてください。