投稿日:2016年09月18日
目に青葉、山ほととぎす、初鰹と江戸っ子が、夏の風物詩にしていた一つホトトギスである。
粋な江戸っ子は視覚、聴覚、味覚で夏の到来を愛でたのである。
万葉集にも約150首ぐらい歌われているといわれ、古来から親しまれている鳥である。
ウグイスはホーホケキョだが、ホトトギスはトーキョキョカキョクと鳴くので、その違いがよく分かる。
昔の人は、このホトトギスの初音を聞こうと夜通し起きていたようだ。
ほととぎす鳴きつる方をながむれば‥‥ただ有明の月ぞ残れる とか何とかの歌を思い出す。
それほど季節の移り変わりを楽しんでいたのだろうか。風流なことである。
この絵にも遠くに丸い月が見られる。格斎さんも夜明けまで待っていたに違いない。
この頃だと朝4時過ぎには明るくなるので、夜はさほど長くはない。
絵にはホトトギスが描かれているが、この鳥は、声はよく耳にするが、めったに人前に姿を見せない。
かわいげな鳥だがウグイスの巣に卵を産みつけ、他人に育児をさせるなかなかのしたたか者である。
津和野でも日原でも、今年はホトトギスの声をよく聞いた。
後日談 詠み人知らずの歌として「拾遺集」に
「鳴けや鳴け 高田の山のほととぎす この五月雨に 声な惜しみそ」
という歌がある。古来よりホトトギスの名勝地として名高かったのだろう。