投稿日:2016年06月11日
邸内にあったもう一つの御茶屋である。
半峯亭は直接月を見る所だが、
こちらは池に映る月を観て愉しむ所だ。
茶屋の半分は縁として池の上に浮かんでいる。
蒸し暑い津和野の夕べを楽しむには最高の造りだったろう。
水面に映る満月を釣れるものなら釣りあげてみたい、
そんな思いが「釣月」という名になったのだろうか。
名月や池をめぐりて夜もすがら 名月を取ってくれろと泣く子かな そんな句がふと浮かぶ。
この池には錦鯉はいたのであろうか。魚影は見えない。
寄棟造りの屋根の下には雨落ちの玉砂利を敷いている。
臥龍梅にはかわいい実がついていて紫の藤も美しい。
池の向こうの橋は「渡月橋」と呼んでいたようだ。
時は幕末。風雲急を告げる時、美しい景色に囲まれながら、
この茶室の中でどんな話が飛び交っていたのだろうか。
後記 釣月とは道元(鎌倉時代の禅僧)さんの言葉「釣月耕雲」のこと。
世俗を超越した悟りの境地ということらしい。
煎茶を味わいながらそうした境地に遊ぶ茶室であった。